家族が亡くなる前から葬儀社へ相談することに抵抗を覚える方も多くいらっしゃるかもしれません。
しかし、葬儀社を事前に選んでおいた方が後々のトラブルを回避することができるといったらどうでしょう。
実は亡くなった後では、葬儀社を選ぶことはほとんどできません。そのため、それに付随するトラブルも回避することが難しくなってしまうのです。
本記事では、葬儀社を事前に選んでおいた方が良い理由を解説します。
- 葬儀社は事前に選んでおいた方が良い理由
- なぜ亡くなってからでは葬儀社を選ぶことができないのか
- 葬儀までに決めなければならないこと
葬儀の喪主になる経験というのは、そこまで多くないのが現実です。だから分からないことも非常に多いと思います。
筆者は現役のお坊さんで、数多くの葬儀に立ち会い、葬儀社と関わることも非常に多いです。
その中で、葬儀社とご家族がトラブルになるケースというのが結構あり、相談を受けたりしています。
本記事が、初めて喪主になる可能性がある方のお役に立てればと思っています。
亡くなってからでは葬儀社を選ぶ時間はほとんどない

亡くなった後で葬儀会社を選べば良いと思っている人はたくさんいます。
例えば、結婚式や宴会などの場合、いろいろな会場を下調べや下見をして、どれが自分に合っているか、予算的には大丈夫か?というのを確認しますよね。それには結構時間がかかります。
同じように、葬儀会社をしっかり選ぼうと思ったら時間が必要です。
しかし、亡くなってからでは、葬儀会社を選ぶ時間的猶予がほとんどありません。
葬儀会社を選ぶ時間は実質2時間程度しかない
今現在、亡くなる人のほとんどは病室で亡くなります。
病院で亡くなられた場合、ご遺体は病室から病院の霊安室に通常移されることになっています。
じゃあ、霊安室に移してもらってから、ゆっくり葬儀社を選ぼうと思ってもそうはいかないことが多いのです。
なぜなら、病院の霊安室にも限りがあり、安置しておくことができる時間というのも大体の病院で決まっているからです。
霊安室にご遺体が移動された後は、できるだけ早くご自宅や葬儀社併設の安置室に移動するように促されることが現実なのです。
霊安室からの搬送は通常葬儀社が行う
ご遺体を病院の霊安室から、他の場所へ搬送を行うのは、通常葬儀社が行います。
ご自身でご遺体の搬送を行うということもできなくはないですが、遺体の取り扱いには専門知識が必要になってきますので、非常に稀です。
そのため、葬儀社が決まっていない場合、ここで急いで搬送を行う葬儀社を決めなければいけません。
つまり、亡くなってから搬送までの2時間の間で葬儀社を決めなければならないことになります。
だいたいの病院では、ご家族が亡くなった際や霊安室へご遺体を移動するタイミングで病院側から「葬儀社は決まっているかどうか」尋ねられます。
もしこの時点で葬儀社が決まっていない場合は、たいていの病院は葬儀社と提携を行っていますので、その葬儀社を紹介されることになると思います。
しかし、問題は葬儀社の選択肢がほとんどないということです。
病院から紹介されるのだから安心と思われるかもしれませんが、ご注意ください。
搬送までの時間もあまりありませんので、その短い時間の中で決断するというのは結構無理がある話です。
搬送を行う葬儀社が通夜・葬儀を行うことがほとんど
搬送は葬儀社が通常行いますが、そのまま通夜・葬儀もその葬儀社にお願いするケースも非常に多いです。
理由は単純で、搬送をしてもらった葬儀社に一緒にお願いするのが楽だからです。
しかし、先ほども言ったように、病院から紹介される葬儀社には基本的には紹介料などの余分なお金が含まれていることがほとんどです。
実際のところ、病院で紹介されるケースは人件費等の関係で、他の葬儀社にお願いするのに比べて割高になるのは仕方のないことかもしれません。
だからこそ、選択肢が無い中で、病院に紹介された葬儀社に決めてしまうのではなく、事前に葬儀社を選んでおくことが重要なのです。
事前に葬儀社を選んでおけば、いざ搬送という時になったとしても、事前にお願いしていた葬儀社に連絡すれば済みます。
搬送と葬儀は別の葬儀会社にお願いすることもできるが・・・
先にも言ったとおり、搬送から通夜・葬儀までを一つの葬儀社で行うという方がほとんどです。
しかし、搬送と葬儀を別の葬儀社にお願いすることも不可能ではありません。
そうすれば、搬送してもらった後でゆっくり葬儀社を選ぶことができます。
まずは、搬送してもらう葬儀社に対して、しっかり「搬送だけ」をお願いしますということを伝えなければなりません。
もちろん、葬儀社の方としても、搬送をウチがやるのだから、その後も・・・と強く推してきます。
はたして、大切な方を亡くされ、意気消沈している中でしっかりと伝えることができるでしょうか?
さらに問題になるのが、搬送先です。搬送先についてはこちらで選ぶ必要があります。
自宅に搬送であれば、問題ありませんが、今現在ではマンション住まいの方も多くいらっしゃいますので自宅に搬送することができないということもあると思います。
その場合、ご遺体の搬送先の候補としては、自宅や葬儀会社に併設された安置室です。
しかし、葬儀会社に併設された安置室の場合は、その葬儀会社が葬儀を行うことが前提になっていることがほとんどなので、自宅以外に選択肢がほとんどないというのが現状です。
搬送だけを別の葬儀社にお願いすることはできることはできますが、搬送先が自宅以外の場合あまり現実的ではないということだけ覚えておいてください。
葬儀社を途中で変えるのは難しい

無事になんとか良さそうな葬儀社を選ぶことができたとしても、実際に担当者と会ったり、会場を見ることができるのはご遺体の搬送時などです。
また、良い葬儀社だと思って頼んでみたけど、担当の方との相性が良くないや、思っていたのと違うとなっても途中で葬儀社を変更するのは難しいです。
ご遺体の搬送が済んでしまっている場合は、なおさら変更するということは難しいでしょう。
さらに別の場所へ搬送となると別途費用もかかってきます。
だから、時間のある、余裕のあるうちから葬儀社へ訪問を行い、式場を下見するなどのことが必要になってくるのです。
葬儀までに色々なことを慌てて決める必要がある
葬儀会社で事前に相談を済ませていない場合、最低でも以下のことを葬儀の日まで決めなければなりません。
- 葬儀の形式や規模
- 祭壇の種類
- 棺の種類
- 骨壷の種類
- 通夜振る舞いの料理
- 返礼品
自分の心も落ち着かない中で、妥当な判断を下すのはよほど慣れている人が側にいないと難しいのではないでしょうか。
良心的な葬儀会社と良心的な担当者に当たるかどうかは、事前に決めていない場合は本当に運頼りになります。
もし、感じの悪い人に当たった場合は、終始イライラを抑えながら決めることになってしまうことに繋がりかねません。
まとめ
以上が、事前に葬儀会社を決めておいた方が良い理由です。
実際に亡くなった後から葬儀会社を決めようとすると、時間的制約が大きくのしかかり、自分自身の思い通りに事を進めることは非常に難しいです。
亡くなる前にそんなこと考えたくないという気持ちはよく分かりますが、大切な方の最後を未消化のまま終わらせてしまうのは、亡くなった方にとってもよろしくないのではないでしょうか。
今現在、事前に葬儀社に相談することは、非常識なことではありません。
より良い最後を迎えるためにも、事前に葬儀社を下見して、選んでおくことをオススメします。