夏の風物詩でもあるお盆。
お盆の時期には多くの方が、実家に帰省しお墓参りに行きますね。
そんな日本人に馴染み深いお盆ですが、実は仏教の宗派によって考え方が180度変わってきます。
特に浄土真宗では、それが顕著に表れています。
本記事では、浄土真宗のお盆の特徴をお坊さんが解説します。
- 浄土真宗のお盆の特徴は?
- 浄土真宗のお盆でやってはいけないことってある?
- 浄土真宗のお盆は他の宗派とどこが違う?
浄土真宗のお盆が他宗と違っているところ
1.ご先祖様の霊が帰ってくるわけではない
一般的にお盆と言えば、ご先祖様や亡き人の霊があの世からこの世に帰ってくるのをお迎えする行事と考えられています。
しかし、浄土真宗ではそのような考え方をしません。
そのため、浄土真宗ではご先祖様がお盆に帰ってくるという考え方がないのです。
なぜなら、ご先祖様や亡くなった人は、既に仏様に成っているからです。
というよりそもそも仏教に霊という考え方自体ありません。
だからお盆の時期にご先祖様の霊が帰ってくるというのはおかしな話になってくるのです。
では、浄土真宗の人達はお盆の時期に何もしないのか?というとそういうわけではありません。
だから浄土真宗でもお盆の時期にはお墓参りを行うことはもちろんのこと、お坊さんを呼んだり、お寺まで足を運んで法話を聞いたりします。
このことからわかるのは、浄土真宗のお盆は「ご先祖様のため」に行う行事ではなく、「自分自身のため」に行う行事であるということですね。
「え、ご先祖様に対して何もしないのは失礼じゃないか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
でもよく考えてください。既にご先祖様は仏様です。
仏様は、私たちを導いてくれる存在です。
2.迎え火・送り火を行わない
浄土真宗以外の宗派で、お盆の時に行わなければならないことの一つとして「迎え火」と「送り火」があります。
「迎え火」は、お盆の始まりにご先祖様の霊が帰ってくる場所としての目印になるものです。
あの世からこの世へと渡ってくる時に迷わないようにと願って焚かれるものが「迎え火」です。
反対に「送り火」は、お盆の終わりにこの世からあの世へと戻っていく際に迷わないようにと道を照らすように願って焚かれるものです。
「迎え火」は、映画『天気の子』でもその様子が描かれていたり、京都の有名な「大文字焼き」も「送り火」の拡大バージョンなので馴染みがあるという方も多いですね。
しかし、先にも説明した通り、浄土真宗ではそもそもご先祖様の霊がお盆に戻ってくるという考え方はしませんので、「迎え火・送り火」は行うことはありません。
3.精霊棚(盆棚)を設置しない
浄土真宗以外の宗派では、お盆の時に精霊棚(しょうりょうだな)という特別な祭壇を設けることになっています。
精霊棚には、亡くなられた方が好物だったものを置いたり、様々な飾りを飾り付けたりします。
それはこの世に戻ってきたご先祖様の霊が、お盆の期間中は精霊棚に滞在すると考えられているからです。
だから、亡くなった方が好きだったものをお供えするのですね。
この精霊棚も浄土真宗の考え方には合わないので設置することはありません。
お内仏(お仏壇)についても、浄土真宗ではお盆独自の特別な飾り付けは必要ありません。
法事や特別な法要を行う時に用いる打敷(三角形の布)を掛ければそれで十分としています。
4.精霊馬・精霊牛を作らない
もう一つお盆特有の物として「精霊馬・精霊牛」というものがあります。
これらは、ナスとキュウリと割りばしで馬と牛をかたどったもので、ご先祖様があの世とこの世を行き来する際に乗る乗り物とされています。
この精霊馬・精霊牛も浄土真宗の考え方には合わないので使うことはありません。
5.精霊流し・灯篭流しも行わない

お盆の最後に、精霊棚に迎えていたご先祖様の魂を海や川に送り流す行事を「精霊流し」や「灯篭流し」と言います。
お盆の飾り物を川に流したり、船を別に作って川に流したりと地域によって様々なことが行われていたりします。
明りを灯した提灯を川に流す行事が観光事業として取り上げられている地域もあったりしますね。
しかし、何度も言う通りご先祖様が戻ってくるわけではないので、送り出すこともありません。
なので「精霊流し」をすることはありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
浄土真宗のお盆は、他の宗派とは考え方が大きく違っていることがわかってもらえたかと思います。
「浄土真宗のお盆は何もしなくても良いから楽だ」とおっしゃる方もたまにいたりします。
しかし勘違いして欲しくないことは、ご先祖様や亡き人を蔑ろにしているわけではないということです。
ご先祖様は仏様になっているので、常に私たちを見守ってくださっています。
だから、お盆は霊を迎える行事ではなく、ご先祖様が大切にしてきた浄土真宗の教えを聞く機会として捉えているというわけです。